人づくり企業ナツメの理念
新しいモノを生み出すのだから、50年経ってもマニュアルなし。
創業者の夏目雅康は、自らの体験をふりかえりながら、「ものづくりの精神」とは何かをスタッフ全員に常に問いかけています。専門的な製造業には、繰り返しの作業から育まれる手先の勘、ワーク(加工対象素材)と機械との間に生じる微妙な齟齬感やバランスを感じ取る技術、全工程を理解した上で任されたパートをいかに効率よく行なうかを按分できるムダ取りの技術など、マニュアル化しにくい職人仕事が多いものです。
しかし、地味で単調と思われる仕事でもコツコツとこなしていくうちに、しだいに身体が機械に馴染み、ぎこちなさがとれて手先が滑らかに動くようになるものです。反復が教えてくれる基本動作の身体的な習得です。やがてこの基本を応用して、さまざまなワークを自在に加工できるようになれば、ものづくりが本当に楽しくなります。
ナツメでは、苦労や悩みを乗り越えて確かな技術を身につけた技術者に対しては、厚遇をして、後進の指導に当たってもらっていますが、そこには細かいマニュアルは存在しません。マニュアルはあってもいいのですが、ものづくりの喜びに目覚めた中堅スタッフが語るように、「もし製造現場で完璧なマニュアルを作ろうと思えば、言葉の量や説明は膨大な量になるし、それをいちいち覚えても頭から入れるので身に沁みないのです。経験から言えますが、マニュアルよりもベテランの先輩のやり方を盗み、ときに叱られながら、作業全体を自分の身体で包むように覚えた方が、技術の習得は圧倒的に早いし、何よりも怪我なく安全に仕事ができるようになるものです。学ぶより慣れろではなく、学ぶのもいいけれど何よりも慣れろです。職人とか技術屋とかは、身体が慣れて覚えて動けて初めて学べるのです」。ここに言い尽くされています。
「モノづくり王国NIPPON」と、ひとことでいいますが、果たしてモノづくりとはいかなるものでしょうか。
『できる範囲でできることをやっている限り、可能性は広がらない。』
…などはよく言われていることです。つまり、できないこと、難しいことができたときに技術は進化します。挑戦する情熱や志なくして成り立たないのが『モノづくり』です。新しいモノ、誰も作ったことがないモノにはマニュアルはありません。経験と発想と技を武器に編み出していくのがモノ作りの原点といえるでしょう。
身体を使って技を研鑽。『ワンストップ技術』がここに!
ナツメでは、創業当時に導入した汎用旋盤を、50年経った今も使っています。プログラム制御で動く高度な機械が当たり前となった現在でも、まずは面倒な手作業を必要とする汎用旋盤に触って慣れて、手づくりの感覚を身につけます。技術の出発点である人間の手の感覚や感性の大切さを知ってほしいからです。
ナツメは全てを一つ一つ手作業でこなしていた時代の「職人の技術」という原点に立ち返ることで、設計確認から完成までのすべてを一人でできる「ワンストップ技術」が身につくと考えています。技術者が全体を見通す眼を養い、作業の按分やフローを関連づけられるようになれば、前工程も後工程の処理のタイミングも、すべて全体から演繹(本質を理解し応用する)できるようになります。逆に、特殊なモノを手がけることでこそ、帰納(体験により本質を理解する)された、普遍的な本質を得ることができます。一人の技術者がある一部分だけの専門家に終わらない。全体を理解し、全てを一人で完結できる。ナツメではそんな技術者の養成を目標に掲げています。
「一個だけ作ってほしい」は、うれしい受注!
ナツメでは、「こんなパーツを一個だけ作ってほしい」とか「他でできないと言われたんですが、できますか?」といったお問い合わせをよくいただきます。
いわゆる「ライン」に乗って量産されるパーツではなく、『単品アイテム』の製造です。必要に迫られたモノに既成品がなければ、新たな設計図をカタチにするしかありません。私たちの技術は、そのために存在すると言っても過言ではありません。図面と向き合い、どういう工程で作製するか考えているとき、技術者魂がつい熱くなります。
プロフェッショナルであれ
ナツメでは、「継続性」を大切にしています。同じ作業の繰り返しのようでも、それを5年つづけていると、1年目とは明らかに違う「発見」があるものです。先輩たちから技術指導を受けながらも、「わかった」「できるようになった」「品質水準が上がった」という手ごたえや喜びは、自分だけのものです。こうして手に入れた「発見」を自信につなげ、単なる「作業」と思っていた業務を自らのアイディアを盛り込む「仕事」へ育てることで、職場にプロフェショナル意識が生まれます。この過程こそが、仕事の質を高めるということなのです。自分を単なるサラリーマンだ、職人だと勝手に決めつけてはいけません。サラリーマンにも職人にも、アマチュアとプロフェショナルがいるのです。プロのサラリーマン、プロの職人、プロの労働者、プロの経営者を目指すこと、それがナツメの行動理念のひとつです。品質管理を追究する製造現場におけるプロフェショナルとは何でしょうか?ズバリ言えば、ムリ・ムダ・ムラがない業務やコミュニケーションを確立することで、最高品質のものづくりを成し遂げることです。製造に関わった人たちが、すべてプロ意識をもって1つの目標に向かって突き進んでいるならば、技術担当も設計担当も営業担当も管理担当も経営幹部も、みな横一線のプロフェショナル同志で上下はありません。これがものづくり集団の理想形ではないでしょうか。ナツメでは、人の質を高めれば、仕事の質も高まり、製品の質も高まるという連鎖意識を常に心がけています。
代表取締役社長 夏目喬之
個々の技術の集積・連携が50年企業の力!
品質第一主義・顧客第一主義を貫いてきたナツメは、お客様とのコミュニケーションを密にし、確かな製品を安定供給することで大きな信頼関係を築き上げてきました。こうしたお客様との「和」というものは、とくに愛知県三河地方に伝統的に根づく「なんごな心」を大事にするナツメならではの社風も影響しているでしょう。「なんごな」とは、「理に走って角を立てず、穏やかに柔らかくものごとをとらえる」ということです。固い工業製品であってもつくるのは人。人は機械ではありません。人は迷いもあれば過ちを起こすものですが、その原因は何だったのか、すぐに相談できる風通しのよい体制があったのか、さらに、次に活かす評価システムは整っていたか…社内で常に自己検証することが『次』につながります。フィードバックとフィードフォワードを妥協なく繰り返すことで、個々の高い技術を集積し連携できる企業として、社会の役に立つことができるものと考えています。
「チームワーク」「和」の心を尊重した柔らかい環境づくりの中で、スタッフもほとんどが地元出身者ですから、三河人気質が備わっています。より良い製品づくりへのこだわりがつよく、クラフツマンシップにあふれた人材が数多く揃っています。ナツメは、こうした人材こそ企業の財産だと考えています。良い製品をつくりだすためには、設備だけではなく、そこで働く人の「意識」「情熱」そして「和」が必要です。とくに「和」の部分は、個人の能力だけではまかないきれない全体に関わることですから、常日頃から円滑なコミュニケーション、職場環境の整備、お互いの学びの場などを充実させ、働きやすい職場を全員で工夫しています。親睦を図るための社内サークル活動もあります。
良い製品をつくり、お客様に喜ばれることで、働くモチベーションも大いに上がります。そして、自らの技量を上げ、ものづくりの楽しさを覚え、働くことに自信をもつことができれば、いつも溌剌と率先垂範して働ける職場が自然に整っていくものです。ナツメは、社員ひとりひとりが幸せを実感できる明るい人生のステージを提供するために、お互いを支え合い、助け合い、励まし合う「和」の心を大切にしています。
「ものづくり」の基本は「人づくり」です。ナツメでは、「ひとりひとりの人間性を尊重し、人を信頼しなければ、組織というものは健康に動いてくれないものだ」ということを、ものづくりの土台に置いています。