[PROFESSIONAL SKILLS]

高い技術は品質を裏切らない

銅・銅合金・非鉄金属加工のスペシャリスト、ナツメが創業から求めつづけるのはいつでも品質第一主義。

銅は非常に柔らかい金属です。粘りがありますから、ドリルで穴を開ける場合、専門的な技術がないと、刃先に銅屑が付着して穴が開きません。一般的には、鉄製品の加工に比べて銅製品は遥かに加工が難しい、といわれています。ナツメは、創業から50年余の間、銅や銅合金の加工一筋に専門性を高めてきましたので、銅のような柔らかい金属の加工に慣れているせいか、かえって銅は加工しやすい金属という認識をもっています。

銅製品にドリルで穴を開ける場合、銅屑を粉々にならないよう、つなげたままスムースに排出できるかどうかがカギなのですが、これにはドリル刃の形状が大きく影響しています。銅屑をつなげたまま排出するには、既製品の刃を独自に調整しなければなりません。それも、銅合金の性質によって粘性が異なりますから、それぞれの金属の性質に合わせて、いちいち微妙な調整が必要なのです。実は、この技術と調整方法が、ナツメの技術的財産のひとつと言っても過言ではありませんが、ベテランの職人から生まれる特殊技能ですから、図面に描いてわかるというものではありません。もともと非鉄金属加工はニッチな産業分野ですから、非鉄金属加工用の工具が非常に少なく種類もありません。そこでナツメでは、汎用工具を独自に加工してナツメ用に標準化し、製造効率を上げているのです。

また、銅や銅合金はひずみ易く、力をかけるとぐにゃりと潰れてしまう場合があります。銅製品を加工する場合は、当然、ワーク(加工対象素材)をつかんで固定するのですが、この「つかみ方」や「力の入れ方」などにも、ナツメならではの経験が活かされています。

これらの技術を駆使した成果は、格子状に穴を開けた銅製キューブ製品で見ることができます。銅製品の加工に詳しいお客様にご覧に入れますと、「あり得ない!」と感嘆されることがほとんどです。一辺が10㎝にも満たない立方体の奥にまで格子を残しながら、いっさい歪みやひずみを出さずに、完璧に刳り貫きます。削った表面も滑らかで、銅の美しい肌合いを見せてくれています。

ここまでの細かい加工となりますと、通常では、どのようなつかみ方をしても、加工中にどこかがぐんにゃりと曲がってしまい、格子の形成が不可能になるものです。ナツメの伝統技を知っていただくには、もっとも分かり易いサンプルと言えましょう。

誰にも真似のできない銅・銅合金の繊細な加工技術こそ、ナツメが半世紀近い技術蓄積のなかから生み出したオリジナル・テクニックなのです。

スポット溶接の電極先端部位の製造で業界シェアおよそ30%

現在、自動車産業などで主力を担うロボット型のスポット溶接では、電極を取りつけたアームが自在に動き、溶接ライン上を流れてくる車のボディなどさまざまな部位の溶接を行ないます。それに伴い、電極を支えるガンアームも溶接箇所に応じた形状が要求されます。車のボディのスミの部分のように、溶接アームの作業方向が限られている場合や、入り組んだ部分を溶接する場合には、それに適した複雑な形状のガンアームや特殊な電極が要求されますし、同じ溶接ラインでもラインの右側と左側ではガンアームの形状が異なります。車種によっても異なる形状が求められますから、いわば「一品料理」のような対応が必要となってきます。

このように電極部が複雑な形状になる場合、もっとも問題となるのが水冷用の穴開けです。電極部の焼きつきを防ぐために水冷化するのですが、銅製品のなかに水の通り道をつくらなければなりません。ガンアームから先端の電極チップまで穴を貫通させ、水を通すわけですが、アームの形状が複雑になるほど、穴あけの工程も複雑になります。また、アームの長さが長くなるほど穴加工長が必要となり、柔らかい銅製品の奥まで正確な径の穴を開けるのは容易なことではありません。しかし、ここでナツメのドリル加工の技が活きてきます。その方法は門外不出の非公開部分ですが、ナツメの技術力は高い評価をいただいており、溶接専用機メーカーからは設計段階でガンアームの形状に関するアドバイスを求められることもあります。また逆に、メーカーの設計図に対し、ナツメ側から溶接ライン上の制約を想定した形状の修正を提案したりする場合もあります。このレベルに達するには「明けても暮れても挑戦」の日々を重ねなければなりませんでした。ナツメほど銅の切削をする企業はないと自負しておりますが、加工の無人化を行なおうとしても、弊社の加工技術を満足させるNC機がなく、自らパイオニアになるしかないのが現状です。お客様からいただくご注文が、NC機でも加工不可能な形状や機能をもつ場合、ナツメの技術者が自らの手作業で丁寧に製造いたします。どのようなご注文をいただいても、「これは前例がないからできません」と言わせない仕事を常に目指しています。

切る・曲げる・削る・穴を開ける・磨く加工のすべてにナツメ の技術を活かす

銅や銅合金の製品には、電極のような消耗品も数多くありますから、表面磨きなどはおざなりにされたり、多少の傷は見逃されたり、切削・穴開け・成型などの加工後に多少のバリが生じてもバリ取りに注意を向けなかったりするメーカーもあるようですが、ナツメの製品にそのような手抜きはありません。

どんな小さな製品でも、また量産の標準品であっても、ひとつひとつを丁寧に製造し、検品も厳しく行なっています。これは、ナツメが生み出す製品を弊社の「作品」と位置づけているからです。ナツメの製品は工芸品のように美しいと言われるのは、こうした理念を製品に対してもっているからです。お客様が気持ちよく使っていただけるよう、丁寧に仕事をすることで、工業部品も人の手の温もりを伝えるアートのように輝きます。

機能が万全で使えれば十分ではないか、という考え方もあります。しかし、どのような製品もナツメの顔なのです。ナツメの製造者の責任とスタッフのものづくりマインドが刻み込まれている傑作なのです。お客様にとって、この安心感・信頼感こそが、喜んで使っていただける証しなのだと心得ておりますし、品質第一主義のもっとも大切な精神ではないかと思っています。

こうした製造理念に共感いただけたお客様から、近年では、樹脂加工、レアメタル加工、セラミック加工そしてカーボン加工の分野にもご注文をいただけるようになりました。ウォータージェットの導入で、複雑な形状の切断加工も可能となり、ワーク素材の種類を問わず、金属・セラミック・樹脂・石・発泡素材(スポンジ類)ほかどんなものでも繊細に切断できます。

銅製品の製造で培った高度な加工技術を駆使して、あらゆる分野の部品加工を可能にしたナツメの専門技術が、お客様の「困った!」を根本的に解決いたします。